9 月 18 日(木)、第 30 回釜山国際映画祭にて、A Window on Asian Cinema 部門に選出された『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』の舞台挨拶が実施された。
舞台挨拶冒頭、西島は「朝早くから重い映画に来ていただきありがとうございます。」とコメントし笑いを誘うと、満員の会場を見渡し笑みを見せた。
釜山国際映画祭には初参加となる真利子監督も「今回、『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』は初めての海外上映なので、どんな感想があるのか楽しみです。」と興奮冷めやらぬ様子でコメントし、会場は大きな拍手に包まれた。

西島とルンメイのキャスティングの経緯に質問が及ぶと、真利子は「お二人に共通しているのが、嘘のないお芝居をしているということ。西島さんはアメリカの撮影で英語の心配もある中どっしりと構えてくれたし、ルンメイさんは初めて会った時からずっと脚本を読み込んでくれていた。信じ合えて作ることができたので、無事に完成までたどり着けたと思っています。」と二人への強い信頼を滲ませた。

西島はこの度の出演にあたり、「賢治というキャラクターは、感情移入しにくいところや、好きになれないところもあると思いますが、それでも、皆さんが日常生活で感じる“やらなければいけないことと家族とのバランスの難しさ”など、どこか共感できるところを探してチャレンジしたいと思いながら演じていました。」と自身が演じた役への思い入れを述べ、続けて「共同体を離れて自分の本当にやりたいことをやれる時代になったことはとても素晴らしいこと。ただ同時に家族、地域、国など、いろんな共同体とのつながりが薄れていって、孤独になりつつもある。僕もそれをどうやって解決すればいいかわかりませんが、この作品に参加することで考えていきたいと思いました。」と思いを語った。
さらに、本日は不在となったルンメイからは「皆さん、お越しいただきありがとうございます。この映画は観客の皆さんが見て、頭の中で考えてくださることで完成する作品なので、ぜひ楽しんでください。」と伝言があり、西島が代読する一幕も。
そんなルンメイ演じたジェーンについて真利子は、「人形劇師のジェーンは劇中で人形を修復したりする。ジェーンの人形に対する向き合い方は、彼女が家族の問題にぶち当たった時に取ろうとする選択と繋がるような、ジェーンの人形劇への思いと家族への思いが並列するような描き方をしていきました。」と話した。作品の細かい演出やラストシーンにまで質問は及び、大盛況の中約30分間の舞台挨拶は終了した。

さらに、西島と真利子監督は、釜山国際映画祭と世界的ファッション誌「マリ・クレール」が共同で主催しシャネルが後援する「BIFF with Marie Claire Asia Star Awards」にも参加。西島は、「観客から最高の称賛を得た卓越した演技をしたアジア人俳優に贈られる賞」である ASIA STAR 賞を受賞した。

本年の授賞式で日本人で唯一の受賞となった西島は、受賞にあたり「『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』のタイミングでこの賞をいただけたというのは個人的にとても嬉しい。この賞を糧に、映画の未来のために、そして新しい世代のために、より一層頑張っていきたいと思います。」とコメントし、受賞の喜びを語った。共に授賞式に出席した真利子も、「色んな映画で見てきた俳優さんなので、このタイミングでの受賞を見ることができて嬉しく思います。おめでとうございます。」と西島に称賛を送った。