

ふたりが目指していたはずの“幸せな家族”は再生できるのか?


Hidetoshi Nishijima
西島 秀俊
大学在学中より俳優活動を始め、1992年に本格デビュー。以降、『ニンゲン合格』(99/黒沢清監督)、『Dolls ドールズ』(02/北野武監督)、『CUT』(11/アミール・ナデリ監督)などに出演し、様々な賞を受賞。2021年公開の濱口竜介監督による主演映画『ドライブ・マイ・カー』は、米アカデミー賞で日本映画初となる作品賞を含む4部門にノミネートされ、最優秀国際長編映画賞を受賞。自身も全米映画批評家協会賞主演男優賞などに輝く。近年では、映画『首』(23/北野武監督)、『スオミの話をしよう』(24/三谷幸喜監督)、A24制作のAppleTV+『Sunny』(24/ルーシー・チェルニアク監督)および新作映画『Enemies(原題)』など、国内外の作品に出演し活躍中。
真利子監督の『ディストラクション・ベイビーズ』を観た時から、一緒に仕事をしたいと思っていました。全編ニューヨークロケ、セリフの9割が英語という新たな挑戦には緊張感もありましたが、共演のグイ・ルンメイさんの自然で真摯な演技と素晴らしいスタッフ・キャストの皆さんのお陰で、良い雰囲気の中で集中して作品に取り組めました。当たり前のように続く日常が突然崩れゆく中、どうやって日常を、人生を取り戻していくのか。ブルックリンやクイーンズを背景に、真利子監督にしか描けない世界観を味わっていただければと思います。
Gwei Lun-Mei
グイ・ルンメイ
2002年にイー・ツーイェン監督にスカウトされ、19歳で台湾・フランス合作映画『藍色夏恋』にてデビュー。 また『GF*BF』にて、中華圏で権威ある映画賞のひとつである金馬奨で最優秀主演女優賞を受賞。その後も主演女優賞に3度ノミネートされている。ベルリン国際映画祭最優秀作品賞を受賞した、ティアオ・イーナン監督の『薄氷の殺人』ではファム・ファタール役を演じ、新たな一面を見せた。 映画出演作にティアオ・イーナン監督の『鷺鳥湖の夜』、リュック・ベッソン製作・共同脚本、ルーク・エヴァンス主演の『Weekend in Taipei』など。以降も中華圏と国際映画界で活躍を続けている。
はじめて脚本をよんで、独特の気品があり、さまざまな象徴や哲学的な要素を通して、人間の在り方を静かに暗示しているように感じました。その表層的には「語られない何か」こそが、人間にとって、最も魅力的で、最も真実に近いものだと感じました。また、監督の過去作品を拝見しても、心の奥深くにある、言葉では表現できない感情や痛みが、かすかに解放される──そんな印象を受けました。そんな監督の導きのもとで、プロフェッショナルでジェントルマンな西島さんとご一緒できたことは本当に光栄でした。今作は、俳優人生において忘れられない大切な一歩になりました。
Tetsuya Mariko
真利子 哲也
その独自の創造性で、現代の日本映画界において最も注目を集める映画作家の一人。長編デビュー作『イエローキッド』は、バンクーバー国際映画祭ドラゴン&タイガー賞を受賞したほか、香港、ロッテルダム、サン・セバスチャンなどの映画祭にて招待上映された。長編第2作『ディストラクション・ベイビーズ』も、ロカルノ国際映画祭で最優秀新進監督賞、ナント三大陸映画祭で銀の気球賞を受賞するなど、国際的に高く評価される。日本ではキネマ旬報ベスト・テンで3冠、ヨコハマ映画祭で6冠に輝いた。第3作『宮本から君へ』は、アジア映画批評家協会NETPAC AWARD 2020(香港・中国)最優秀脚本賞にノミネートされ、日本では日刊スポーツ映画大賞やブルーリボン賞などで最優秀監督賞を受賞。2019年3月から1年間、ハーバード大学ライシャワー研究所客員研究員としてボストンに滞在。シカゴ国際映画祭の審査員として招かれた際に、本作の構想をはじめる。
数人の仲間たちと何のあてもなく、アメリカで準備をはじめて数年が経ち、ようやく映画を完成させることができました。この間に世界で色んなことがあって、企画は何度か座礁しながらも、この過程がまた、儚くも逞しい、悍ましくも美しい、ニューヨークで懸命に生きる家族を描いた映画に相応しく、日米のスタッフが手を取り合って切磋琢磨に準備して、英語、中国語、日本語、スペイン語から手話まで飛び交う脚本を、西島さんとルンメイさんを中心とした俳優陣が粘り強く、見事に演じきってくれました。この凄い映画を楽しみにしてください。
Blair Thomas
ブレア・トーマス
ブレア・トーマスは、1985年からシカゴで活躍する人形劇師、演出家/デザイナー、フェスティバル・キュレーター。1985年よりシカゴで活動。最近では、メトロポリタン歌劇場ニューヨーク公演『Florencia de Amazons』の人形劇を共同デザインした。現在、2015年に創設したシカゴ国際人形劇フェスティバルの芸術監督を務める。フランスより芸術文化勲章を受章。国際的な賞であるUNIMA-USA賞を2度受賞。イリノイ・アーツ・カウンシル・フェローシップ賞、ジェフ・ノミネーション賞などを受賞。またメリーランド大学でジム・ヘンソン・アーティスト・イン・レジデンス※を務めた最初のアーティストである。
※芸術家が一定期間異なる場所に滞在し、芸術活動やリサーチを行うこと、またその支援を行うこと。
Jim O'Rourke
ジム・オルーク
ジム・オルークはシカゴ出身の世界的な音楽家である。10代後半にデレク・ベイリーと出会い、ギターの即興演奏を本格的に開始。1994年、ガスター・デル・ソルに参加。1999年、フォークやミニマル音楽をミックスしたソロアルバム『Eureka』を発表し、高い評価を得る。2000年、ウィルコのメンバーとともにルース・ファーを立ち上げ、「シカゴ音響派」と呼ばれるポストロックシーンを確立。2004年、ウィルコの『A Ghost Is Born』のプロデューサーとしてグラミー賞受賞。1995年から2005年にかけて、ソニック・ユースのメンバー兼音楽監督として活動。近年は日本を拠点に、くるりや石橋英子らをプロデュースする傍ら、映画音楽も手がける。参加した映画に青山真治監督の『月の砂漠』(2001)、オリヴィエ・アサイヤス監督の『DEMONLOVER デーモンラヴァー』(2002)、若松考二監督の『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(2008)、熊切和嘉監督の『658km、陽子の旅』(2023)など。